ROCKIN'ON JAPAN 1992.5

「青臭さの王様」ロック、近日公開!


元カッツェと元シェイディ。「自分の信じる音楽の為だけ」に合体したナチュラル・ユニットを語る



インタヴュー=市川哲史中村敦)、山崎洋一郎塚本晃




Atsushi Nakamura (ex - KATZE)



・最初からいきなり不躾な質問なんですが---カッツェは何故解散しちゃったんですか。
「......」
・「お化粧ビート・バンド」的な誤解と闘い続けながらも、最後のアルバム「ラヴ・イズ・ヒア」でようやく自然体に目醒めた矢先だったでしょ? 髭も突然生やしちゃうし、私はカッツェの大逆襲に期待してたんですけどねえ。
「諦めが早いのかもしれません(笑)」
・何に対する諦めですか。
「やっぱり各々演りたい事が、あの時点で違ったと思いましたから、潔く」
・中村君があの時点で演りたかった事って、何なんですか。
「基本的に今も変わらないけど、唄ってる内容を重視したかったんですね」
・ほら、常に紆余曲折してたというか、自分の唄の理想をバンド・イメージの破綻も覚悟で追求していたというか。
「偉そうな話ですけど、やっぱ音楽を聴いて欲しいという意識はあって。でも実力とか受け取られ方で、『きっと表面の部分だけ見られてるんだろうな』というのは常にありましたよね。それが不安だったりジレンマだったりしたんでしょうね」
・音楽性の向上と変わらぬ世間の目というジレンマが、中村君を極端に走らせたんですかねぇ。
「んー、むしろジレンマに駆られるよりは、自分の欲求の方が大きくなってきたんでしょうね。だからカッツェが合わなくなってくるというか、接触部分が減ってきたんでしょうね。きっと」
・しかし当時髭生やしてムサ苦しい風貌になるってのは、ある意味で自殺行為なわけで(笑)
「(笑)俺はわかんないけど」
・そうかなあ。何かで読んだ記事で、当時いつも付けてたヘアバンドを「孫悟空の輪っかみたいなもの」と中村君が言ってて---つまり、カッツェの中村で居る為に自ら課してた業のような。その逆が髭というか。
「それは無きにしもあらずですね」
・そっから整理すると、カッツェの中村と本当の中村という二人が居ないと何も出来ない、的な状況があったと思うんですけども。
「そうですね、居ましたね。今も二人居るんですけど、HEAVENの中村と僕はお互い満足出来てるというか、しようとして頑張ってると思いますね....あの頃はどっちかがどっちかを認めてなかったのかもしれませんよね、今考えたら」
・昨年6月にカッツェが終わって、具体的に次の展開は見えてたんですか。
「何も無かったんですけど、その時に塚本が居たって事でしょうか。奴もその前にシェイディ辞めてますから。でも一緒に演る演らない以前の問題で、何か違う事が演りたくてお互い辞めたってのが、やっぱ正直なとこじゃないですかね。カッツェ終わった次の日からもう詞を書き始めて。曲も。7月になったらもう、二人で1ヶ月ぐらい合宿して籠ってましたね。
・塚本君と組もうと思った、最大の動機は何なんですか。
「あまり言いたくないけど(笑)、あの時点で一番俺の事をわかってくれた奴ってのがデカいですね」
・なかなか照れ臭い発言ですね(笑)
「(笑)だから言いたくないんですけど、正直言えばやっぱりそこで。HEAVENを組んだからって事よりも、俺は塚本という個人の方が尊重出来るし。二人で演る事もやっぱそれ越しに尊重出来るから、居心地は悪くないっていう感じですか」
・もはや他人じゃないですね、それは。
「(笑)出会った頃から、音楽の話ばっかで盛り上がってて。ブルースが好きだとか、唄はどうやって作るとか」
・二人で青臭く「曲はさあ、やっぱこうやって作るんだよ!」みたいな。
「そうですね、それ言わなかったら俺一生独りで演ってるほうがマシだから。人とそういう会話出来なくなっちゃったら、やっぱりまた前みたいにヤメちゃうから。と思います。それ無くなっちゃったら、人と演る意味全然無いから。ハッキリ言えば」
・四六時中音楽の話をしていたい、と。
「してたいです。他は全然興味無いです」
・極端な音楽馬鹿が揃ったぞ、と。
「そう言って貰えるなら、ありがたいです(笑)。8月19日には初ライヴ演って---16歳で初めてライヴ演った時とあまり変わらなかったですね。意外に新鮮で。今までの自分達のキャリアをお互い出さなかったから。出したらやっぱり馬鹿らしい、意味が無いと最初から思ってたから。愉しめましたよね、何かもどかしいところも含めて、上手くなろうっていうパワーを信じて」
・久々の原点回帰であった、と。
「忘れてましたね。思い出したっていうとこがありましたね。あの1stライヴは忘れないと思います。で、すぐツアーを組んで---まあ、ちんたらシコシコ曲を書いて溜めて、ってタイプじゃないんですよね、きっと。書いたらすぐ唄いたい。場所は別に飲み屋でも何処でもいいんですよ。それで動きながら、HEAVENのキャリアを増やしたいと凄く思ったし。未熟でも」
・だから過去の自分は全て無し、ここからが私の始まりです的な意識が凄く強かったんじゃないかなあ。
「強いです。でも、当たり前過ぎて言うのも嫌なんですけど、やっぱり演ったら悪いとこ見えるじゃないですか? そこを直す為に努力する事の繰り返しですよね。で、テメエの芸がどこまで磨かれるかって事だけしか興味無いんですよ、今は。後はもう本当どうでもいいっていう」
・そのテメエの芸って、かなり変化は見えてきてるんじゃないですか?
「もう全然違いますね、驚くぐらい。感覚的にはもう今からでも家に帰って曲書きたいし。それを早く聴かせたいと思うし。唄った時に『違うな』と思う箇所をまた直してもっと良くしたいって、したくてしたくてたまらないと思ってるから、やっぱり全然違うんじゃないですかね。そんな事、昔はあまり思わなかったから」
・詞も凄く変わりましたよね、凄く素朴な言葉が増えて自然で。ほら、自分の感じた事をそのまま唄いたいって時に限って、詞は難しくなっちゃうでしょ。力が入ったり、言い回しが自然じゃなくなったり。
「それはわかります。唄ってて100%自分じゃなくなっちゃったら、やっぱり伝わらないし。塚本も俺もそういうの嫌いだし、それに対して力量がついてこなきゃ駄目じゃないですか。そこはやっぱり唄いたいですよね、良い唄を」
・だからHEAVENって結局、お互いに自分らしさを極限まで素直に出す為のユニット、だと思える。
「そういう風に言われると絶対そうかな---100%そうだと思う。それ以外は無い、と思います。ズバリだな(笑)」
・目指すは「青臭さの王様」だな。
「考えた事無かったな。でも否定出来ません、それは(笑)」


Akira Tsukamoto (ex - SHADY DOLLS)



・塚本さんの場合、中村さんとの出会いっていうのが、全ての発端になってるじゃないですか。
「そうだね。そうなってる、なってる」
・中村さんはカッツェにおける活動の反動とか欲求不満とかあったけど、塚本さんの場合は、そうじゃないと思うんですよね。
「そうですね。ま、欲求不満もありましたけどね。同じような所でね。ただ、なぜ欲求不満になってきたかって事の中に、敦と会った事は大きいですよね」
・その2人の出会いっていうのはどういうものだったのか、ドラマティックに語ってほしいんですが。
「何か、シェイディも友達少なくてさ、カッツェも下関から出てきたばっかで友達少なくて。で、たまたまレコード会社が同じってこともあってね。友達欲しいじゃないですか。でも、他のメンバーの方が付き合いはあったね。俺はこのバンドとはそんなに仲良くなかったんだよね。あんまり好きじゃなかったっつーか....(笑)」
・やっぱ先入観とか偏見とかあったんだ。
「そうだね、偏見だろうね」
・お化粧して、カッコつけてやってるバンド、みたいな。
「ま、化粧してたのは俺たちも同じだけどね(笑)。ま、その頃は、自分たちのやってるスタイルが一番いいと思ってたから、その他のものは何でも受け付けないっていうのがあって」
・それが変わってきたのは、どういう所からなんですか。
「ま、日が経って話するようになるじゃない? したら、今まで会った事のないような感じの人でしたからね。その頃はやたらと熱かったのかな。俺は、自分の中では凄え醒めてたからね。で、一番気持ちの波長が合った時に、お互いが、今まで自分の現実にしてる事に飽きちゃったとこがあったんだろうね。って言うか、全部が作業として流れていく事に、俺は区切りをつけたいな、と思っていたからね。だから、シェイディやめたいきさつっていうのは、いろんな理由とかってよりも、やめるって事をしたかった、みたいな。やめてみたかったっていうね。その時はどんどんどんどん気持ちが高ぶってるから、音楽にも飽きてたような気もしてたし。システムに飽きたって言ってみたかったりとか、そういうのが折り重なって」
・で、中村さんと実際に一緒にやろうって時に、いろんな話し合いとかはあったんですか。決意した夜、みたいな?
「いや、毎晩決意してたよ。もう事あるごとに電話して」
・その時は、”恋は盲目”状態みたいな?
「そうだね。決めた時は、それしか見えなかったね。それくらいインパクトがあったからね」
・具体的には、2人でどういうとこから始めたんですか。
「1回ツアーをしたんだよね。アコギと唄、だけでさ。でも、バンドのコンセプトとか考えんの、凄いヤんなってたからね。だから、自分たちでコンセプトとか決めないでやったんだよ。気がついたら、やっちゃってたっていう。子供みたいですよ。大人になりたいんだけどね(笑)」
・楽しかったですか、ツアーは。
「ま、楽しくもあり、ブチのめされもしましたけどね。今思ってる事がどんぐらい受け入れられるのかな、みたいな気持ちでやったから。だから、『やっぱ、受け入れられねえんだな』って思う事もあったしさ。単純に、今まで両バンドを見てきた奴にとってはさ、『何じゃ、こりゃ』って感じにはなるわな。ま、関係ねえやって感じだけど、初めは落ち込んだ(笑)。『今までやってきた事の、何が不満だったの?』とかいう意見を聞くとさ」
・でも、やってる本人としては、そういう問題じゃないんだよね。
「そうだよね。でも、実際にそういう文面を見ちゃったりすると、ちょっとナーヴァスになったりしたけどね」
・それでも、2人の確信とか絆は揺らぐ事なしに、とにかく前に進もうっていうポジティヴな空気があった。
「そう....ま、それが全部ではないけども、結果的にはそうなんだろうね。でも、確信なんてどこにもないですよ。お互いに認められない所がいっぱいあると思うのね。でも、認められる部分があまりにも強いから、今一緒にやってるんだと思うんだけどね。お互い、個人の事を中心に考えてるから、僕も唄いたいと思ってるし、そこん所で納得できない事があったら、どんどん出してくし。それで、壊れるのか、もっと強くなんのかわかんねえけど。そういう意味で、先の事は考えてない」
・中村さんと塚本さんの自由な激突がHEAVENだと。
「そういう風に見てくれたら、嬉しいけどね」
・下手すると爆発するかもねえ。
「下手してもいいと思うんだ、俺は。だって、もともとそういう観点で始めた訳だから。周りから見りゃ、バンド組んだ時点で、もう下手してんだし(笑)。けど、俺たちにとってはそうじゃなかったんだ」



まさに恋は盲目、相思相愛、一心同体。
一番ラブラブだった頃ですね....(遠い目
ファーストアルバム「Wonderful Life」は
好きでしたけど、その頃はまだまだ
自分にとってKATZEが全てだったので、
どうしてもKATZE>HEAVEN、
中村敦塚本晃という気持ちがありました。


「プラットホーム・ブルース」が今でも好き。
初めて塚本晃がメインボーカルを披露した
「終わるまで始まり」。ここから今に至る訳で。
その意味とか重大さを理解するまでに
10年くらいかかってしまいましたとさ。


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