塚本晃インタビュー1994年末 by 田中浩一

中村敦塚本晃が組んだHEAVEN。ここんとこ音沙汰も酒の誘いもないと思ったら、塚本はスタジオ籠もってインディーズでのアルバム制作、敦は故郷でバンド結成という個別活動を進めていた。で今月は『最大瞬間風速」と名付けられたアルバムも完成日前の塚本へ、ここ8ヵ月の動きや作品の上澄み等について聞いてみた


編集部=文 永富謙一郎=写真
text◎B・PASS Editor photo◎Kenichirou Nagatomi



●一番最近のHEAVEN in パワステ・ライヴって何月だったっけ?
「あれは……4月。だから半年以上この(ライヴや取材等という外界の)空気に触れてないんだよね」
●で、その間ずっと塚本はアルバム作ってたわけで。それもHEAVENとして中村敦と二人で作るという形ではなく、“サウンド・アパートメント"という名義の実質塚本晃/初ソロ作になってるんですが。なんでまた独りでそんなものを作ろうと思ったのか、から。
「……いきさつっスか?(笑)たぶんこれ、あと十何回取材とかで話すことになるんだろうな。まあ……いきさつか............どう思う?」
●取り合えず“煮詰まった"。
「煮詰まってはいないよ」
●いや“取り合えず他の事も演ってみんべえか"的な意味で。
「いや、これは俺にとって、もう同一直線上にあるからさ。カケラもはみ出てはいないよ。で、もともとHEAVENというグループ自体も、そういう演り方を許容するように作り込んでたつもりだしね。だからソロ・アルバムってことでもないし……“でも何?"って聞かれると何も説明できないけど...…だけどさ、HEAVENと同一直線上には居ながらも、俺はこれを作らなければいけない宿命だったんだよ」
●その宿命は、塚本が予測してたより結構早い時期に来た? それとも予測とぴったりの時期だったのかな?
「まあ『快晴予報』作り終わった直後……今年の始めか、ちょうど俺も敦もこのまんま演る事もないなと。音楽を作るという中ではね。だけど敦とずっと接触していたいって気持ちは強いわけさ。そうすると必然的に互いが個人として……どういう事を考えてどういう物を出して行こうとするかってのを考える必要があったんだよ。そしてお互いをもっと認める必要があった」
●二人とも、ほぼ同時期にそう感じてたんだ?
「そう、まったく同じ瞬問」
●さすがやのう。
「さすがでしょう? 理解されないんだわ、そこんとこが周りには」
●なのに4月にはあの素晴らしいライヴが出来たってとこも面白いけど。
「そう思ったからこそああいうコンサートが出来たんだと思うよ。で、やっぱこれからも良いコンサート演っていきたいから……その為には自分を裏付けていく物が無いと駄目なわけさ」
●裏付け、すなわち作品てこと?
「うん、作品もあるし、そこで色々と物を考える事だったり、質だったり。だからHEAVENをこれからもっと続けていく為にも、自分をもっと沸騰させる為にもこれは必要だった」
●しかし敦じゃなくて塚本の方が先にソロを出すってのも、なんか君の"生き急ぐ人生"を象徴してて面白いよね
「いや……別にそういう格好良いアレはないけどさあ」
●単なる仕事好き、とも言う。
「ああ……やっぱ俺レコード作るのは凄く好きだからなあ」
●なあ? 敦なんか故郷の方へ帰って一軒家借りて、地元の連れとバンド組んでるんだもんなあ今。
「いや、でもそういう事が出来る奴のことを凄いうらやましいとは思うよ。俺には絶対無理だからさ」
●東京出身だからな(笑)。それに真面目に音楽を突き詰めるってのが、塚本には合ってる気が凄くするね。
「そうだね、真面目に演らにゃあ面白くないもん。それに......個人で外部を遮断しといて、で自分のことを考える作業みたいなのも好きなんだろうね」
●実際作ると決めた時に、作業の演り方はどうしようと考えてた?
「あ、パーカッションとかピアノはHEAVENのツアーとおんなじ人。もう一人頼んだパーカッションは敦のバンドの人だし(笑)」
●あら(笑)、じゃ本当に塚本が自然に気の合う人と、いつも通りに気持ち良く……だけど"敦と一緒にではなく、自分だけで作ってみた"ってわけだ?
「そう。それ以外は全然考えてなかったし、それで良かったんだよ」
●“一人で演るならこんな音楽を演りたい"とかいう新機軸は?
「ないないまったく、そういうのは。もう本当にHEAVENの延長線上っていうか、あそこで歌を作ろうとする時とまったくおんなじ............だけどさ、周りの人とかは"じゃあHEAVENで演りゃあいいじゃん?"て話になるんだよ。で、そこがうまく説明しきれないとこなんだけど」
●大変だね(笑)……で、実際の作業もHEAVENの時と同じく、まずは山に籠もって詞から書き始めたの?
「うん、5月から。でも物凄く時間かかったねえ全部の作業が......ほらHEAVENならジャッジしてくれる相手(=敦)が居るからさ。でも今回は全部自分で善し悪しも判断したから」
●そういう“独りジャッジ創作活動"ってのはどうスか、経験してみて。
「もう、これしかないでしょうって感じだよやっぱり。覚悟決まるしさ」
●こないだ電話もらった時も"こいつえらく開き直ってるな"と思った。
「開き直ってるよ、そうしなきゃ出来ない物だったし。で、それが楽しいんだよね、やっば開き直ってない作品に評価がくだるよりは全然マシじゃん?だから今回は“自信作!"とか言うよりもっとこう……"これ出来ました、ここに置かさしてもらいます"(と、そっと物を遠くに置く仕草)みたいな感じだなあ、うん」
●発売が2月20日か......ええと、年が明けてからの予定はどんな感じ?
「1月はリハーサル。2月(24&25日)の新宿パワーステーションのね。
サウンド・アパートメントに敦のバンドのザ・レインボーフィッシュ、そしてHEAVENが出演するという、04年後半の空白を一気に埋めよう!という豪華なライヴですな(笑)。
「でもまだアルバム出来てないから、そっちを早く仕上げないと(笑)」