続き。



元カッツェの中村敦と元シェイディー・ドールズの塚本晃が、
ミュージシャンとして原点に戻り目標をしっかりと定め直して
再出発しようと結成されたのがHEAVENだった。
アコースティック・ギターでツアーを回り、そしてデビュー。
アルバム「ワンダフル・ライフ」はシェイディーともカッツェとも
全く関係のないブルージーでソウルフルな男臭い出来になった。
「なるほど、ロックとブルースとソウルが好きでたまらない男2人が、
等身大で正直な音楽活動をやっていこうということなのだ」と
僕は受け取った。そのピュアな思いを応援しようという気持ちだった。
そしてツアー。2人の思いが時には空回りするほどの「素っ裸の」
ライヴだったが、これも僕には「なるほど」と思えた。
このバンドの魅力はピュアな音楽野郎のピュアな心意気なのだから。
思いっ切りやってくれさえすればよかった。


ところが、その後HEAVENに対して大きな"?"を感じざるを得ない
出来事が起こった。12月14日、ニューエスト・モデルボ・ガンボス
共演したHEAVENは大荒れの惨憺たるライヴをやったのだ。
中村は酒を喰らい、機材を壊し、終わるとスタッフへのあいさつも
おざなりのままとっとと帰ってしまったのである。
その後、中村は頭を坊主にしての本作のレコーディングに入った。
そして出来たのが、この見違えるほどのアルバムなのである。
そのイベントが原因かどうかはわからない。が、HEAVENの2人は
"ミュージシャンとしての原点に戻る"などという悠長なテーマは
とうに投げ捨ててしまったに違いない。このアルバムはそんなものではない。
崖っぷちからダイヴして転げ落ち、谷底に叩きつけられたところから
歌われる歌だ。だからフォークもある、ロックもファンクもある。
打ち込みもあればハサミの音もある。サイレンもあれば小鳥のさえずりも
入っている。何だっていいのだ。ただ一曲一曲が、一音一音が揺るぎない
ものでなければならない。全15曲70分以上に及ぶヘヴィーな
「格闘の記録」。なのに聞いたあとに「美しさ」が心に残っているのは、
彼らがミュージシャンとしても突き抜けてしまった事の証だ。
何だか知らないが、今作に関して2人はインタヴューを受けないという。
それは納得がいかない。何としてでもこのアルバムをめぐって
中村・塚本と話したい。"ピュアな音楽野郎"を越えたHEAVENの
意思を聞きたいのだ。


そして6月号で中村、7月号で塚本、
それぞれのインタヴューが掲載された。
(また気が向けば後日)


が、それ以降山崎氏からHeavenについて
言及される事は一切無く、3rd『快晴予報』
リリース時のインタヴュアーは兵庫慎司氏。


その後HEAVENの活動はフェードアウト。


というお話。


これを書きながらずっと
HEAVENを聴いていました。


やはりまぎれも無くこの2人は特別であるし、
『UNNATURAL GROOVER』は
掛け値なしに素晴らしいアルバムだと思う。


もちろん『快晴予報』も大好きなんだけど、
1st → 2nd ほどのの飛距離は出ていない。


山崎氏が取り上げなくなってしまった、
HEAVENの活動も煮詰まってしまった、
原因はそこにもあるのだろう。